再生可能エネルギーはデメリットが多い?太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど再エネの問題を解説【中3理科】

こんにちは、つかさの教室 教室長のつかさです。
中学3年生の理科では、「エネルギーとその利用」や「自然環境の保全」について学びますよね。
その中でも、注目されているのが「再生可能エネルギー」です。でも、太陽光や風力って“いいことばかり”なんでしょうか?
この記事では、再生可能エネルギーの「良い点(メリット)」と「注意すべき点(デメリット)」をわかりやすく紹介していきます。
再生可能エネルギーってなに?
まずは基本的なことから書いていきます。再生可能エネルギーについて知っているぞという人は次の章までスキップしてOKです。
再生可能エネルギーとは
地球上に自然に存在し、何度でも使えるエネルギーのこと。
化石燃料に頼らない発電方法なので、温室効果ガスをあまり出さず、環境にやさしいとされています。

化石燃料を使用する火力発電では、原材料(化石燃料)のほとんどを外国に頼っているのに比べ、再生可能エネルギーの場合は国内で生産できることから、将来に期待されています。
主な再生可能エネルギーの種類は次の5つです。
種類 | 特徴 |
---|---|
①太陽光発電 | 太陽の光で発電する |
②風力発電 | 風の力で風車を回して発電する |
③水力発電 | 高いところにある水のエネルギーを利用して発電する |
④地熱発電 | 地球内部の熱を利用して発電する |
⑤バイオマス発電 | 生ごみ・家畜のふん・木材などを燃やして発電する |
中高生に伝えたいこと
再生可能エネルギーは、地球温暖化を防ぐカギとなる発電方法です。電気は生活していく上で必要不可欠ですよね。
ただし、万能な方法ではなく、場所やコスト、自然とのバランスを考えることが大事になってきます。
これからの日本では、どのエネルギーをどう組み合わせて利用していくかがとても重要です。日本は災害も多く災害対策可能な事も重要なポイントです。
日本ではデメリットをあまり報道しない?
再生可能エネルギーは「二酸化炭素がでない」「材料費が安い」「地球に優しい」など良いイメージで語られることが多いですが、意外にデメリットもあります。
水力発電などはどうでしょう?デメリットは思いつきますか?
山の一部を水の中に沈めるのです。そこで暮らしていた人・動物・植物は住処(すみか)を奪われてしまいます。
ダムの放水量をコントロールされたことによって成体数が10分の1以下となったホンモロコ(クリックで滋賀県のHPへ)という魚も居ます。
どの発電方法にも必ずデメリットがあります。本当に自然に良い発電方法なのでしょうか。

今回は再生可能エネルギーが生物に与えうる影響について考えていきましょう!
人間に都合を優先すると他の生き物にとって害となるのは考えたら分かってきます。太陽光発電から順にメリットとデメリットを見ていきましょう。
① 太陽光発電のメリットとデメリット

太陽光発電とは、屋外や屋根などに設置された太陽光パネル(太陽光電池モジュール)に、太陽の光が当たることで電気をつくるシステムです。
屋外で大規模に設置されているものの他に家の屋根に取り付けられていたり、避難所となる施設の屋上に設置されていたりします。
太陽光発電のメリット
- 太陽がある限りエネルギーが手に入る
- 発電時に二酸化炭素が発生しない
- 災害時に使用できることもある
- 小さな家庭でも屋根などに設置できる
災害時には避難所だけでなく、家庭でもスマートフォンの充電ができたりします。
最近では、大規模な太陽光パネルにUSBポータルが取り付けられていて、災害時に利用できるようになっている物もあります。
太陽光発電のデメリット
- 導入にコストがかかる
- 夜や雨の日には発電できない(積雪時も発電できない)
- 広い設置面積が必要(大規模な森林伐採などが行われることも)
- 地震による被害も大きくなりやすいので、比較的安定した土地が必要
- パネルの処分が将来の環境問題になる可能性がある
大規模な太陽光パネルを設置する場合広大な安定した土地が必要となり、自然を破壊してしまう可能性があります。生態系の変化によって食物網の関係性が悪化し、生き物が全然いない場所になってしまう可能性もあります。
自然を破壊しないために、耕作放棄地や公共施設の屋上を活⽤した太陽光パネルの設置が進められている。
また、家庭で太陽光パネルを設置している場合でも、設置費用が高く、普通に電力会社から電気を購入した方が安くなってしまうことも多くある。
太陽光パネルは、地震・台風などの自然災害で壊れるリスクもあります。
② 風力発電のメリットとデメリット

風力発電とは、風の力を利用して風車を回し、風車の回転運動によって発電機のタービンをまわす発電のことです。
陸地だけではなく、海上にも設置されています。EEZ(排他的経済水域)まで設置が拡大されたことにより再注目されています。
風力発電のメリット
- 風が吹けば発電できる
- 昼でも夜でも発電できる
- 二酸化炭素を出さない
- 発電コストは年々下がってきている
- 海の上でも発電できる
日本は世界一大きな大陸と世界一大きな海に挟まれた国で、風がよく吹きます。風が吹くだけで発電できるので、とってもエコです。
EEZ(排他的経済水域)にも設置できるようになるので、期待されています。
風力発電のデメリット
- 風がないと発電できない
- 風向きによっては安定しない
- 風が強すぎると危ないので、運転を停止する
- 騒音や景観問題がある(近くに住む人への配慮が必要)
- バードストライク(鳥が衝突する)問題がある
- 風車の近くに鳥が住まなくなる
- 風車によって渡り鳥の進路を妨害する
- 魚を捕りに行けない鳥も出てくる(海岸から1㎞以内に設置した場合)
- 地震や台風などの自然災害で壊れることも

生物への影響は特に飛ぶ生き物にとって深刻なものとなっています。鳥類全般や哺乳類のコウモリ、昆虫などが被害にあっています。
風力発電のブレードは高速回転しています。ブレードに衝突することで生き物が死亡する事故が増えています。
設置する際は、風向きや風力だけでなく、生き物にも配慮することが必要です。
陸に設置する場合は、ブレードが落ちてくる可能性もあるため、周辺は立ち入り禁止区域になります。広大な土地が必要になります。
③ 水力発電のメリットとデメリット

水力発電とは、流水や落水による水の高度変化を水車の回転に利用して発電する方法です。
大規模な水力発電所では、安定した発電のために多くの水をためておく必要があります。また、川の流れなどを利用した小型の水力発電もあります。
水力発電のメリット
- 発電量が安定していて予測しやすい
- 昔から日本でも使われている
- 二酸化炭素は出さない
一度できてしまえば、大きな災害がない限り長い間使用可能です。雪どけ水や梅雨時期の雨をためておくことで1年中発電できるのが他の再生可能エネルギーとの違いです。
また、安定して水を流すことができるので、下流の農業も水不足になることなく作物が安定して作られます。
水力発電のデメリット
- 大きなダムが必要な場合、自然環境を壊すことも
- 魚の移動がさまたげられる
- 地形に左右されて建設場所が限られる
大規模なダムを山間に作るとなると、村1つがすっぽりと水底に沈んでしまいます。
そこに住んでいた人、住んでいた動物、生えていた植物は移動、絶滅せざるを得ません。
ダムで発電するために放水を行っていると、水位が人間によって操作されることになります。水位が人に操作されたがために成体数が10分の1以下となったホンモロコ(クリックで滋賀県のHPへ)という魚も居ます。
川に小規模な水力発電をつけることで、魚類の移動が阻害され、繁殖や生息環境が変わってしまうこともあります。
④ 地熱発電のメリットとデメリット

地熱発電とは、地下のマグマなどによって熱せられた高温の水や水蒸気の力を用いて発電機のタービンを回す発電のことです。
日本は活火山や温泉も多く地熱発電に適した土地が比較的多くあります。しかし、他の再生可能エネルギーと比較してまだまだ少ないのが現状です。
地熱発電のメリット
- 火山の多い日本に向いている
- 天候に左右されず、安定した発電が可能
- 二酸化炭素もほぼ出ない
天候に影響されにくいので安定して電力を生み出すことができます。また、地下の温まった蒸気に力で発電するので、温室効果ガスがほぼ出ません。
地熱発電のデメリット
- 温泉地や国立公園と場所がかぶることが多く、開発しづらい
- 地下の温度管理や掘削が難しく、コストが高い
- 水温変化による水中の生物の絶滅、水中の生物を餌としていた動物の絶滅
- 発電所を建設する際の騒音などで動物の生態系に影響が出る
- 発電所を作るのに長い年月がかかる(10年程度かかる)
日本は自然がとても豊かな国の一つですが、生態系が豊かな国立公園内に地熱発電を設置可能な場所が多くあります。
国立公園内で森を切り開いての大規模な工事を行ってしまうと国立公園内の生態系に影響を与えてしまいます。希少な絶滅危惧種が絶滅してしまうかもしれません。
日本にある活動しているマグマは国立公園内にほぼあり、自然への影響が懸念されています。
⑤ バイオマス発電のメリットとデメリット

バイオマス発電とは、木材や農産物の廃棄物、家畜の排泄物、一般家庭から出る可燃ごみなどを直接燃やしたり、ガス状の成分に変換(ガス化)して燃やしたりしてタービンを回して電気をつくる発電方法です。
バイオマス発電のメリット
- ごみ(バイオ資源)をリサイクルできる
- 安定して発電できる(風や天気に左右されない)
- 地域の森林や農業と連携できる
林業で出る廃棄物や畜産業で出る廃棄物などを燃やすので、ごみを燃やすことで発電できます。
火力発電に近いので、安定して電力を生み出すことが可能です。また、すでに稼働している火力発電の中でも一部バイオマス燃料を混ぜることで、環境に配慮しているところもあります。
バイオマス発電のデメリット
- 燃やすとCO₂が出る
- 輸送や処理にコストがかかる
- ごみの分別や管理が必要
- バイオマス発電のために木の伐採、植林が必要
通常の火力発電と比較して原材料費が高騰しがちです。国内の木材を利用していますが、木材チップを作成するために木を伐採し、そこに植林することもあります。
荒れた森林などは人の手を入れることで、生態系にとって良い影響となるところもありますが。現状は森林をきれいに切り取ってから植林しているので、生態系に悪影響が出てきているところもあります。
まだまだバイオマス発電への認知度が低く、ごみや廃棄物だけで発電が成り立たないのが難しいところです。
- +αの問題:人件費もバカにならない(クリックで開く)
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バイオマス発電の多くは、廃棄物だけで成り立たないので、木材チップを燃焼させることによって発電しています。
現状は伐採する業者が必要で、伐採した木を加工してチップにしています。間伐材や不要となる木の皮ではなく、森林を切り開いて木材チップを作っています。
バイオマス発電の会社が国の補助金を利用して、木材チップを購入しています。批判的な言い方になってしまいますが「木材チップを作成するのに多額の税金が投じられている」というのが現状です。
伐採する業者も補助金がなくなると仕事を失ってしまうのでしょうか?そこも考えどころです。
バイオマス発電の燃料に関する問題は、今後の課題とも言えます。
バイオマス発電だけは火力発電と同じく、二酸化炭素が発生します。木はもともと光合成をおこなっていますので、木が二酸化炭素を吸って酸素を放出してくれます。
その木を原料に燃やすので、炭素を基準に考えると±0にすることができます。これをカーボンニュートラルと言います。

バイオマス発電がカーボンニュートラルであるかどうかは意見が分かれています。(政治的な意味で)
厳密には±0ではないので「カーボンニュートラルに近い発電方法」と言えますかね。
まとめ:再生可能エネルギーは「万能」ではない?
エネルギー | メリット | デメリット |
---|---|---|
太陽光 | 二酸化炭素を出さない 家庭でも導入可能 災害時でも使えることがある | 夜は使えない 広大で安定した土地 災害に弱い |
風力 | 二酸化炭素を出さない 空気を汚さない 風があれば発電可能 | 騒音・台風の影響あり バードストライク 発電が不安定 |
水力 | 安定して発電できる エネルギー効率〇 二酸化炭素を出さない | 自然破壊 水中の生物への影響 ダム建設のコスト |
地熱 | 日本に火山が多く適している 安定して発電が可能 二酸化炭素を出さない | 温泉地問題 国立公園に発電所 建設に時間とお金がかかる |
バイオマス | ごみを再利用 安定した発電が可能 | 燃やすとCO₂ 森林が減る 運営コストが高い |
みなさんの周りの発電所ではデメリットに対してどのように対策が取られているでしょうか?
地域の再生可能エネルギーの現状を知ろう
再生可能エネルギーも結構身近になってきましたよね。
自分が住んでいる都道府県・市区町村ではどんな発電方法を利用しているか知っているかな??
まだまだ火力発電に頼っているのかな?
それとも再生可能エネルギーに移行しているのかな?
ぜひ、調べてみましょう。

私が住んでいる石川県では地熱発電以外の発電方法を利用して居ます。再生可能エネルギーのなかでも特に多いのが水力発電です。
石川県は降水量が多く、山が多い地形なので水力発電に適した土地です。大規模水力発電所と言われる施設が県内に28か所あります。
自分の住んでいるところではどうでしょうか?調べてみましょう。
さいごに:未来のエネルギーを考えよう
再生可能エネルギーは、地球にやさしく、未来のためにとても大切です。
でも、「良いことばかり!」というわけではなく、それぞれの特長や問題点を正しく知ることが重要です。
特に今回は生物えの影響がないかどうかという視点でデメリットを考えてみました。意外に動物への影響があるんですよね。
生態系の勉強と発電の勉強なにが関係あるんだろ?というと、デメリットに関係していました…。
将来や自由研究にも役立つ内容なので、ぜひデメリットも覚えておいてください!